昼食カタストロフィー
「最近みっか連続で知広が夢に出てきてるんだー。すごくない?」
「ふーん」
問:上の改行はなにを表しているか。答:思考の停止。
未樹のそのセリフと、そして笑顔は一瞬ながら膨大な情報をはらんでいた。痛いメなんて慣れっこな私を、改めて打ちのめすほどに。
「どうでもよさそうだね……」
「別にそういうわけではございませんが」
未樹はお弁当のたまごやきを幸せそうにほおばり、じっと視線を合わせてきた。目を見て話さない人は信用できないらしい。
「でね、ふたりで夢の中で授業受けてるの。アレが復習になればいいのになぁ」
「睡眠学習」
「あはは」
むじゃきだ。17てまえにしてグレーゾーンの扉さえ見えてないくらい無邪気だよくそおおお。
「ていうかなに? 片想い?」
「は?」
「毎日夢に好きな人が……みたいな。ごめんね、お友達のままでいましょう?」
「あはは」
そうやって、何のひっかかりもなく目尻をゆるめて。細い足と、水玉の靴下と短いプリーツスカート。とっても身軽なあなたは、楽しいか楽しくないかがすべての基準。生きてく基準。
だから、私といるのも楽しいんだろう。
「そいえば知広、今日もおしゃれだね」
未樹は私のパーカーをいじりつつ言った。モノトーンの蝶柄、昨日買ったばかり。こういうことに気付いてくれるのも。
「そんなことないよ」
「顔が嬉しそうですよダンナ」
感情を隠しきれない私をよく理解してるのも、好き。
「あ。カフェテラスのスープ飲みに行きたいからついてきて」
「はいはい」
ひょいとリュックを背負い上げ、芝生を駆けて行った。シルバーのパンプスで後を追う。
「あそこのスープ10円安くなったの知ってる? すごくないこの不景気に!」
「相変わらずケチだね」
うるさいなー、と笑った。未樹は1日に何百回と笑う。子供染みて。
みっか連続だって? 一緒に授業?
あなたの夢なんてほとんど年中無休で見てるのに。うしろめたい私は伝えられない。本気の私は口にできない。未樹の彼氏を脅したこととか(夢で)、未樹とキスしたこととか(夢で)、未樹とセックスしたこととか(夢で)未樹を犯してしまいたい衝動に駆られたこととか、ピュアな親友の前で言えるわけがない!
罪悪感はたとえ、ただお弁当食べてるだけの夢だとしても。
[10/03/09]
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