焦がれた思いのまま
「ん……あ、そこ!」
「こう?」
「……うんッ、あー……はぁっ」
「……」
まあ、よくあるシチュエーションだと思っていただきたい。背中が痛いと早苗が騒ぎ出した。で、無言でベッドにうつぶせになられた。やることはひとつ。
「彼女がいるっていいね」
「今言うかそれを」
あたしの存在意義ってこんなもんか。と、いじけるわけではないけれど。
「っあ……ぁ、んあッ」
――やらしい。赤面が伝わったのか確信犯だったのか、早苗はにやにやと口をひらく。
「凌、いま欲情してる」
予想通りの言葉に、なのにカッと体の芯があつくなった。どうせ発情期だ。ただでさえ年中サカりっぱなしの人間。
首筋に手を這わせると、早苗の肩が揺れた。
「つめたい」
そういえばあたしは冷え性だ。いやがっている表情が面白くて、ゆっくりと肌の上を滑らせていく。
「……っ」
わずかに頬が、染まる。もういいだろうと手を離す。襟を引いて鎖骨の裏の窪みに口付ける。息づかいが、熱を孕んだものに変わった。
運悪く――結果的にどうだったかはさておき――早苗はワンピースを着ていたので、なんの準備もしていなかったあたしは裾を手に取りたくしあげる。
「寒っ。ていうかいきなり下?」
「脱がすのめんどくさい」
「そんなに欲求不満なんだ」
まあね、って肯定した。してしまった。無意識に。自分の声で、本音に気付く。オレンジのタイツに人差し指を掛けて、中指を掛けて薬指を掛けて下ろす。膝下でとめて、腿の内側を舌でなぞった。足を閉じようとする早苗の反射を両手で妨げる。脚の付け根へ、ゆっくり移動する。
甘酸っぱいにおいが微かに鼻をついた。布一枚隔てて指先で確認する。全身が、跳ねた。
「あっ」
早苗の膝は苦しそうに動いて、おさまるべき場所を探している。
――かと思いきや。
眼前に、橙の影。
それはもう明快な蹴りだった。右目が潰れるんじゃないかと思った。
「ん……っあ」
「凝ってますねーお客さん」
女が女を犯すのはむずかしい。
「勘弁してよ」
「あんな目で見られたら、お預けって言いたくなるじゃない」
キスすら、できないのだ。
「あ、もうちょい左」
永遠に作動することのないでっかい爆弾を抱えながら、恋人の背中に、マッサージ用ローラーを転がしている。
[09/12/19]
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