Live your life until love is found、とわたしは覚えたての英語を算数のプリントの余白に書きとめてから顔をあげた。おもちゃみたいなテーブルの向こう側で反比例に苦戦する凌に遠慮なくじっと視線を向ける。いつも二問のひらきがあった。でも私が教えてあげようとすると必ずムッとした顔になっていう。自分でできるから。
グリーンでていねいに統一された凌の部屋は、あらゆる色彩やフォルムが繁雑にまじりあったわたしのそれとは正反対だ。そして無機質。コルクボードを埋め尽くすような写真はどこにも見当たらない。
「おわった」
「さいごいくつになった?」
「1200メートル」
わたしがはじき出した値とは300ばかり差があったけれど、指摘はしなかった。自分で作った会話の流れをぶったぎる。
「たいせつなおはなしがあります」
「……うん」と凌は眉を寄せ片手で頭をかかえた。「知ってる」
「ならてっとりばやいね」
切り返せるほどの余裕がわたしにはあったらしい。それがなにに裏打ちされた自信によるものだったのか、いまも謎である。
「好きです」
わたしは単刀直入に言った。小六の三学期だったあのとき、迫りくる卒業になぜか焦りを抱いていたから。中学校生活に夢見てならべたてた幾多のたらればの裏には、喪失の思いもおなじだけ潜んでいた。
「うん、知ってる」
「つきあってほしい」
「うん」
知ってる、と凌はもう繰り返さない。水面下にあった思いが、ようやくわたしたちのまえにきちんと姿を現した。
「でも」と恐ろしい逆接が入る。「特にいままでと変わることもないよな」