Die Together
「もしもあと一日で」
たとえそれがどんな使い古しの言葉でも。
「世界がなくなるとしたら?」
彼女の口から出たのなら、春宵一刻値千金。
「どうしたの、いきなり」
「なんとなく、ね」
静生ちゃんは虚空を見上げて言う。わたしはその瞳の奥にあるものを希求した。たぶんこういうのを心酔とか傾倒とか人は表現するのだろう。
「わたしは――」
「うん?」
喉が詰まる、息が詰まる。
たとえ世界がどういう状況に陥ろうと、わたしの望みはただひとつ。
「静生ちゃんと一緒にいるよ、さいごの0.1秒まで」
緑の黒髪の彼女はちょっと沈黙して、そっか、と呟いた。
「ありがとう。じゃあさ」
声が途切れて、水をうったような静寂に身を委ねる。プールの中で上下左右があやふやになるときに似た浮遊感。
「私は海に入水して果てたいんだ。生物のはじまりの海に」
じりじりと照りつける日差し、汗ばんだ背中、狭い天下。まさか明日、すべてが失せてしまうなんて思わないけど。
「ついてきてくれる?」
「言うに及ばないわ」
静生ちゃんはにっと笑って感謝を表した。“Love is Blind”、一瞬苦しそうに歪んだ表情はしっかり見て見ぬ振りをする。
樹海だろうと、海底だろうと、ここではないあらゆる場所。
怖くないさ、あなたとならどこへでも。
In Sickness
[08/07/15]
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