お題5 優先順位
A Girl Who Is The Girl
あきらは中性的になりたがる。
名は体を表すという言葉は真実なのだなとわたしはひとり感心したものだ。
「信じらんねー、そんなこと言うなんて」
がやがやと騒がしい廊下なのに、あきらの冷たい声は響く。ただしその冷たさは所詮擬態でしかないので、わたしは可笑しさをかみころしちがう種類の笑みを浮かべる。余裕を適度に外に滲ませて。
「ちえりは本気で悪くないと思ってんの?」
「少なくともひとさまに迷惑はかけてないもん」
はあ、とため息をひとつ。幼なじみの男子と昼食を一度ともにしただけでこの言われよう。まったく嬉しくないわけじゃないけど、束縛家の彼女にうんざりする男の気持ちがよくわかる。
「あたしは傷ついた」
あきらはまるでそれしか正しい言い分はないとばかりにわたしの目を睨み付けてきた。
「……あのね、それは迷惑じゃなくて嫉妬っていう至極一方的なものだよ」
わたしはあきらを傷つけたつもりはない。どんな形であれ、深くひとと付き合っていくうえで矛盾は避けて通れない道だ。無理に辻褄をあわせるには必ずどちらかが妥協しなきゃいけない。だけど生憎わたしにもあきらにもその気はさらさらないから、残る手段は正面衝突。
「あっそう、分かりました」
「なにが?」
「邪魔者のあたしが退散すればいいんですよね。あいつとお幸せに、相良さん」
あきらはそう「言い捨て」るとわたしの脇をすり抜けていった。いちおうシリアスなシーンなのかもしれないけどわたしの顔はゆるみっ放し。怒ったときに敬語を使ったり名字で呼んだりするって、どれだけ女の子なのだ。煩わしさもなにもかも通り越してかわいい。さっきまではかすかにこびりついていた苛立ちはどこかに消えて、わたしはあきらの背中を追った。
「聞いて、わたしは」
こういう場面にもってこいの言い回しを、知っている。
「あきらが誰より、いちばん大切だから」
[08/08/??]
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