お題3 いつも通り
モーニングイルミネーション


 ゆめみたいにうれしかった。
 いつもはシャイで接触をきらうあなたがわたしと腕をからませ、てのひらをあわせてにこにこしながら川原を歩いている。水面はひっきりなしに光を反射し、おだやかに吹く風に形をあたえた。足もとの砂利や小石がわたしたちのバランスをくずしにかかるけど、かえって二人の距離が縮まる。空にはちいさい鳥が二羽、画用紙の塗り残しのような白さで飛んでいた。あなたはわたしの一歩先を、ほそい髪を空気にのせながら進む。わたしはそのタンクトップからのぞく鎖骨をひとさしゆびでなぞった。あなたはとたんに顔を赤らめて、少年ぶったポーカーフェイスからあどけない少女の面持ちにもどる。わたしはたえまなく湧きあがるかつてないほどのいとしさに胸をつぶされそうになりながら、あなたにふたことみこと耳うちをした。
 つぎの瞬間、青空は無機質なベージュの天井に、わたしたちを照らしていた太陽は蛍光灯にかわる。うつむくと砂利道ではなく教室のタイルの木目が目にはいった。
「おはよう」
 そしてただひとつ動かず揺るぎない、あなたの落ちついた声。返事のかわりに小指をとってくちづけると、夢のなかで見たのとおなじ、あのしおらしい表情をくれた。
 わたしのしあわせは爽快な天気やきれいな景色のなかにあるのではないと、あらためて心から思う。


[08/08/19]
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