お題2 優しすぎて。
Go Go ヘヴンの勇気 /2
「もうやだ凌となんか一緒にいたくない!」
叫びとともにパンダのぬいぐるみが顔面にぶつけられる。どうして自分が怒られているのかさっぱりわからないまま、あたしはそれを手にとって盾にした。
理由はわからなくてもこういうときは聞き役に徹しないとのちのち面倒になる。あたしがそういう条件反射的な思考を働かせた瞬間、早苗の目が光った。
「そんなだから、いつも、わたしばかりが、だめになる」
涙を流しながらとぎれとぎれに言い終えると早苗はしゃくりあげ始めた。あたしはゆっくりととなりに腰かける。珍しく結わえずに下ろされた、意外と硬いその髪に触れた。
「やめて」
消え入りそうな声。そろそろ頃合いかと判断し口を開く。
「わかった、早苗が嫌だと思うことはしない。でも理由は聞かせて。悪いところがあるなら言って」
「ばか!」と早苗は再び声を張り上げる。「そこだよ、そういうところだよ。お願いだから」
言葉が切れる。なに、と努めて優しい口調で続きを促した。
「依存させないで……」
「え?」
まったくの不意打ちだ。頭の中が真っ白になる。たいていのことはそつなくこなす早苗が依存している? あたしに? そう思ったのを柔らかくして伝えると猛反論をくらった。
「やっぱりばかだ凌は! 私が要領よくできてるのが誰の存在のおかげだと思ってるの?」
「話の流れ的にあたしですか」
「いまごろ気づくなんて」
たとえ遅かったとしても正解は正解だ。それで、と言い足す。
「なんで怒られてんの、あたし」
早苗は目を丸くして、それから信じられないというふうに眉を寄せる。少し間をおいて一気にまくし立てた。
「まだわからない? 凌といるとわたしはどんどんわがままに、いやな女の子になっていくんだよ。あなたが全部許してくれちゃうから。優しすぎるから!」
すごい剣幕に気圧される。さてあたしはここで謝るべきなのだろうか、本気でわからない。早苗の言うとおりあたしはずっと許容してきた。だってそれが苦でなかったから。自分の前でだけわがままを見せてくれることが嬉しかったから。
「いいんだよ、それで。あたしは早苗のいやなところとか全部ひっくるめてよく想ってる」
我ながら恥ずかしいセリフだな、と内心苦笑しながら口に出す。早苗は呆れたようにも見える表情でため息をついた。
「いつか身を滅ぼすよ。わたしも凌も」
ずっと離れなきゃそんな心配もない。そう思ったけど今度こそ本気で呆れられそうなので、あたしは黙って早苗の背中をさする。
[08/08/18]
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