物語とは、往々にして、凡てを終えたものを言う――――。 お話とは、一つの筋である以上、その伸ばされた一本の線は、必ず、その終いの場所へと辿り着く。 故に、これより話す言葉は、凡てが繋がり、文になり、台詞となりて、筋と成る。 お話は、凡て今。 これから話すお話は、先を見せて行けない。 なぜなら、これから語られる物語は、凡て今にして過去のお話なのだから。 だから、物語を始めるにあたっては、旧きにならいて、こう始めよう――。 ”昔し むかし” のお話を おはなしのためのわらべうた ![]() ![]() むかし むかし 其れは遠く 遠く懐かしい 昔語り 月は丸く 花は梅と言いし頃 とある所に 体の弱い娘がいた その少女 生まれしときより 病を持ちいて生まれ 外の世の常を知らずして 長い時を家にて過ごす 家より出れぬ 娘 健気にも言いつけを守る かのせいか すくすくと育ちたる娘 げにうつくしき娘となりきにけり その美しさ 世に知れ渡りて 婚姻を求めるもの絶えず とある名の知れし 公達 これを一目見んとのぞきて 心を奪われにける 公達 持てる限りの財を抱き 娘の父を尋ねけり 娘の親 喜びて これをうける しかし この娘 暫しするや まこと不思議なことになりけり 夜になり 寝床へつくなり 度々 おかしきことおこりえり 公達がいうに 娘 あさき眠りにつくなり 仄かに 白き泡 玉のごとく 浮かび 極彩を放ちて これ 娘をてらしにけり ちちいわく この泡 娘の夢にありやむ 内より出れぬ身ゆえ むすめ光る泡にて よを焦がれし 公達 これをしるやいなや むせなきびて いえをさるけり 男 それをみると 静かに戸を閉めけるかな しかし 明くる日 男 戸を開きにけるや 公達 山ほどの木々と紙 持ちて娘の寝室にこもりけり おとこ心配になり 覗き見るや 公達 光の泡覗きて それを紙に写しにけり 加えてこの公達 筆の立つ故か その絵 いと美しきかな 男 呆れ床につきしかな のちに この娘 夢見の姫と呼ばれ 世に知られり やがてこれ 夢絵巻草子となりて 世をにぎわしけり
文 イズキ 絵 岩澄龍彦 すかいあ2ndCD「ツ ギ ハ ギ」より『夢絵巻』 |